ネリと井岡と山中
井岡のドーピング疑惑が晴れたみたいですね。
というのも、JBCが検体を正常に保管しておらず、採取した井岡の尿が腐ってたとか。
JBCがまともにドーピング検査をできる体制じゃないことがバレただけ。
JBCのドーピング検査に信用なんてないということがバレてしまうと過去の検査の信頼性はどうなんだという話になる。
日本では引っかかったことのない尾川堅一がアメリカのタイトル戦で引っかかり王座剥奪無効試合になったり、みんなご存知ルイスネリが黒になったり。
いやーアレだけ叩いていたネリのドーピングも叩けなくなっちゃいましたね。
さて、そのネリが負けたんですが、あんまり驚きはない。
Sバンタムはバンタムよりも全体的なレベルは高いし、連打型のネリが同じく連打型でフレームが大きくタフなゾンビファイターのフィゲロアに食われた。
何となくコットvsマルガリートを思い出しますね。
メキシコ系はたまにこの手のフレームがでかいゾンビファイターが出てくるんですよね。
まああの試合は勝者のマルガリートがバンテージに石膏仕込んでたんですが。
ゾンビファイターはパワーと手数でサンドバッグにしてしまうか、脚を使って振り切りつつポイントアウトするのが定跡だと思うんですが、ネリは後者に失敗した感がある。
フィゲロアからするといつも通りの泥試合に持ち込んでフレームで圧し潰す理想的なボクシングだったんじゃなかろうかと。
Sバンタムはなかなかタレントが豊富ですが、個人的なイチオシはWBA暫定のアリームです。
ネリのドーピングが確定から疑惑程度になってしまったんですが、山中はネリのドーピングや体重超過に負けたというよりも、自分に負けたあるいは聴衆に負けたという感じがします。
晩年の山中って本当に左ストレート一辺倒で、倒すことだけに意識が向いていて、被弾が増えてダメージが蓄積して打たれ脆くなってたんですよね。
正直誰が相手でも負けうるボクシングをしていた。
晩年はほぼ毎試合ダウン奪われてたんじゃないかと。
元々山中ってそんなスタイルじゃなくて、もっと脚も使うし嫌らしいジャブを打つし、トータルの完成度が非常に高い選手だったんですよ。
防衛戦の1, 2戦目くらいがピークだったんじゃないかなと。
いつの間にか左で倒すことに夢中になり、ボクシングのバランスを崩していった。
これはよくある話で、長谷川も似たような傾向にありましたね。
KOに意識が向きすぎるとディフェンスが疎かになり、強豪選手にはそこを突かれる。
vsモレノ1なんかは完全に負け試合を地元判定で勝った試合ですが、方向性を間違わなければモレノ相手でもポイントアウトできたと思うんですよ。
だから、ネリが強いとか、ドーピングのせいで負けたとか、そういう話じゃないと思うんですよね。山中の晩年ってのは。
ビックリしたのはむしろ内山が負けたことで、内山って長期防衛の中でバランスを崩さずにいいボクシングを発展させ続けていたんですよ。
KO率が高いんでパンチングパワーに目が行きがちだけど、ジャブの組み立てや距離感の管理、ディフェンス意識の配分が凄く上手かった。
まあ当時は本人の望むビッグマッチが組まれずモチベーションが低下していたり、対戦相手のコラレスの出来がめちゃくちゃ良かったりと運が悪かった。
コラレスも結局はあの試合がピークで、中南米にありがちな自己管理ができないままピカイチの素材を磨ききれなかった。
内山の負けとコラレスの現状に関しては悲しい。
まあそんな感じで、JBCはやっぱりクソだしボクシングはKOよりもリスク管理のスポーツだなと思うわけですね。