健康的でうまいものを作る

ただうまいだけのものを作るのはそう難しくない。

甘さと塩っぱさと脂を増やせばいい。

その上で食感にバリエーションをつける。

至福点という概念があって、ある量まで食品の砂糖を増やし続ければ美味しさが上がり続け、一定の量を増えると逆に美味しさが減る。その点を至福点という。

このように、美味しさが低減する量に至るまで塩と砂糖と油を増やし続ける。

ひょっとしたら辛さを入れてもいいかもしれない。

 

もう一つは食感で、我々がポテトチップスを好むのは脂ぎっていて塩っぱく、それでいてサクッとした食感があるためだ。

サクっとしたり、フワッとしたり、モチっとする食品は好まれやすい。

しかも、それらの食感が複数感じられて多層感を感じるとより良い。

 

これらを極めると、食事報酬によって依存的な旨さのとりこになる。

 

しかし、塩は高血圧に、砂糖と油は肥満につながる。

ただだた美味しさを追い求めると、現代では不健康まっしぐらである。

大昔の祖先には貴重なものだったため、我々の体はこれらの要素を本能にプログラムされているし、外食産業やお菓子メーカーはこれらの仕組みをハックして金を稼いでいる。

 

健康的な食事の試みは、不健康3要素をなるべく避けて美味しいものを食べる、あるいはより美味しくする努力をすることである。

 

味覚、食感、香りの面から戦略を考えていきたい。

まず味覚だが、不健康3要素以外にも味覚はあり、それらは相対的に健康的である。

酸味であったり、旨味であったり、苦味

味が足りないときに、甘みや塩みを加えるのではなく、酸味や旨味を加えてみる。

酸味はフルーツや野菜の他にも、ビネガー類の種類は多い。

ワインビネガーやアップルビネガーから、黒酢のようなものまで幅広いバリエーションの酢を使うことでより食材に合う組み合わせを探せる。

 

旨味は海産物や発酵食品に多いが、それ以外にもトマトに含まれていたりする。

これらを前提に料理を組み立てる、あるいは足して足りない味を補ったり、健康的で中毒性の高い料理を作る。

チーズでも昆布でも納豆でも醤油でもいい。

ただし発酵食品には塩分が多かったりする。

 

次に食感の多様性だ。

外はカリカリ中はふわっと、スポンジとクリームとタルト生地の3層が〜

という表現があったりするように、食感の多様性、とくにサクサク・ザクザク・ガリガリしたものは重要だ。

食感にコントラストを出そう。

ナッツや海苔を使ったり、焼き目をつけてみたり。

 

最後に香り。

コンテンポラリーな料理やカクテルでは香りを抽出して使う、なんて手法があったりするし、カレーや東南アジアの料理ではハーブやスパイスを多用する。

これらは香りだ。

レモン果汁を使ってもいいし、ハーブやスパイスを沢山使ってもいい。

あまり伝統的な日本料理の手法ではないので、日本ではこれらの要素があまり家庭料理に取り入れられることがないように思う。

しかし、日本でも山椒や柚子といった香りを料理に加えてきた。

 

旨味をベースに味を作り、食感にコントラストを出し、酸味と香りで仕上げる。

こんな作り方があってもいいんじゃないだろうか。

外食やジャンクフードとは全く違う前提の、縛りプレイを楽しもう。