the matchと競技性と商業性
the matchを見てた。
キックはあんまり詳しくないけど、なんとなく思ったことを。
大まかな結果としては、RISE(とシュートボクシング)勢がK1勢に勝ち越した形となる。
これがこのまま双方の力量差となるかというと、そうとは言えないと思う。
個々の選手の違いはあれど、脚とジャブをうまく使ってポイントメイクするRISEに対してK1勢が苦戦した形になる。
これは選手の技術力の違いというよりは、K1とRISEという競技の方向性の差といえる。
K1は素人の観客にも分かりやすい、打ち合いを求められる。
だから、脚を使って距離を保ってジャブを丁寧に突くスタイルは評価されない。
近距離で派手な打ち合いが得意分野である。
防御技術も脚を使って外すというより、ガード主体になる。
それに対してRISEはもっと競技志向で、打ち合いもあるが、技術力を魅せつけて支配するという試合も評価される。
今回の試合でもその傾向が出た。
K1勢は近距離の勝負に持ち込みたい、それに対してRISEは脚を使って、中長距離から試合を組み立てたい。
この勝負でうまく戦ったのがRISE勢だと言える。
相手が打ち合いに来てくれる前提で技術体系が成立しているK1勢は脚を使う距離の長い相手を捕まえる手立てがあまりなかった。
リングカットしながらプレスをする戦略をあまり持ち合わせていない。
その結果、K1勢は遠目から一方的に攻撃される形になった。
これはメインの天心vs武尊でも同じ形だ。
相手が接近戦をしてくれないと、K1勢の技術はそもそもあまり発揮できない。
また、ガード主体のK1勢はグローブが普段より小さい6オンスになったことで、更に相手のジャブやストレート系の遠目のパンチを被弾する結果になった。
じゃあRISE有利のルールだったのかというと、そうでもない。
採点はK1寄りでダメージ優先で、ちょっとくらいの手数や有効打では10-9をつけてもらえなかった。
K1側としては、それでも選手が倒し切るという自信があったのだと思う。
そういうわけで、普段のルールの差が大まかな結果に現れたんじゃないかなと思う。
もちろん、ゴンナパーとか海人とか原口みたいにそんなの関係なしに圧倒した選手もいる。
ここまで書くと、K1のルールに欠点があるように思うけど、そうは思わない。
商業的にはK1は成功しているわけで、素人にも分かりやすい打ち合いをさせて、そのルールの中で世界観を作るという新生K1のやり方は上手かったし、それ以外で継続的に日本でキック興業を成り立たせる術はなかったように思う。
天心ありきのRISEと武尊無しでも成り立つK1の団体としての基盤の差は大きかったはず。
そして、他所の選手にはK1ルールの中でしか戦わせていなかったのも正しかった。
唯一の誤算は、武尊が予想以上の存在になって看板を背負って、その責任を同時に背負わされたことにある。
ここで矢面に立って、こっちに来て俺たちのルールで戦えとK1サイドがUFCのダナホワイトのように言い続けられたなら、もう少し違う結末が見られたかもしれない。
それに加えて、the matchの意義と立ち位置に関してだけど、個人的にはRIZINと似たようなものかなあと思う。
軽量級キックの最高峰を決めるといっても、軽量級でキックを本業にやってるのはほぼ日本人だけで、その他がムエタイ勢くらい。
新生K1を昔見たときに、世界と言いつつなぜ日本人だけなのか、と思っていたけれど、そもそも世界に名だたるキックボクサーなんてほぼいないというのが現状だった。
そして、中量級に関しては、かつてはGLORYが、現在ではONEが主戦場。
K1勢もRISEの原口も海外の選手にボコボコにやられている手前、とても日本がトップとは言えない。
キックが専業ではない海人に真正面から攻略されて負けるまで中量級キック日本人最強と評価されていた野杁ですら、ピケオーに真正面から押しつぶされていた。
そのピケオーもアラゾフやグレゴリアンにKOされているとなると、世界の壁の厚さがよく分かる。
ピケオーを完封した久保優太がいかに凄いかという話でもある。
ということで、the matchは実質日本人がメイン層のキック世界最強と、中量級キック国内最強を競う場だったなと改めて思った。
構造的な話ばっかりだったので純粋な感想としては、志朗vs玖村が個人的に一番楽しみな試合だった。
四朗は軽量級キックで一番好きな選手で、卓越した技術力をベースにマシーンのように淡々と戦略を実行していくのがとても魅力的だった。
この試合も淡々と支配していた志朗と、支配されている中でもダウンを奪った玖村のK1の意地が見られてよかった。