パワーとスピードとロマン

佐々木vs湯場を見た。

佐々木が苦戦をしたことで、このままでは世界は厳しいなんて意見を目にするようになった。

たしかに、このまま世界に通用するとは思わないのだけど、それでも佐々木の道は世界に通じていると思う。

 

ボクシングを10年以上見続けてきて、それなりの数の選手を見てきた。

その結論が、やはりパワーとスピード、パンチ力がボクシングの要だということ。

パンチ力があるけど技術の拙い選手とパンチ力に欠けるが技術力の高い選手なら、世界タイトルにたどり着く確率は前者の方が高いだろう。

もちろん、技術が拙ければどこかで負けるわけだけど、それでも、そもそもパンチ力の無い選手は世界戦までにふるい落とされる。

 

ぼくたちが目にしている技術力の高い選手というのは、パンチ力がそこそこある上に技術力が高い選手ということだ。

 

ぼくはパンチ力がない選手がスペック差を覆す試合が好きだし、トニーハリソンみたいな選手が好きなのだが、それでも彼らはこれまで何度も理不尽な一発に泣かされてきた。

彼らに一発があれば、と思ったことは数え切れないほどある。

 

井上尚弥の技術、というのを語るときに、彼がいかにパンチ力を軸に据えた技術を構築しているかはあまり語られない。

井上尚弥のパンチ力が並なら、彼の技術体系はそもそも根底から覆る。

上手い井上尚弥というのは、パンチ力に支えられている。

ディフェンスもカウンターも、全てはパンチ力あってこそなのだ。

井上拓真と尚也の違いなんて、パンチ力が8割だと思っている。

 

そして、佐々木のいる中量級は日本人が何度も世界の壁に返り討ちにあってきた階級である。

技術の勝負に持ち込む前に、そもそもスピードとパワーで蹂躙される。

亀海ですらそうだったのだ。

もっとも、亀海は東洋クラスなら平気でKOしてきた選手なのだけど。

というわけで、佐々木のパンチ力が世界に通じるかはともかく、少なくともその可能性は大いにある。

この段階での細かい技術なんて、パンチ力に比べると大した問題ではない。

平岡は強いけど、ポテンシャルは圧倒的に佐々木だと思うので、次戦で大きく羽ばたいてほしい。