トニー・ハリソンvsセルヒオ・ガルシア

ぼくが現役で一番好きなボクサー、トニー・ハリソンの試合があった。

ちなみに2番目はランセス・バルテレミー

 

試合自体は結構前だったのだけど、映像が上がってなかったのでエキサイトマッチで見た。

DAZNにカードを取られがちになったお陰で、こういうPBCの地味強黒人が見られるようになった。

 

ハリソンはテクニックに秀でていて、小技という意味でのテクニックではクロフォードに次いで現役2番目くらいあると思っている。

その反面、非力で打たれ弱く、終盤で体力や集中力を切らして負けるパターンも目につく。

 

この試合に関しては、ハリソンによるボクシングレッスンだった。

小技の玉手箱と呼んでもいいハリソンが実力を大いに見せつけた試合。

相手の踏み込みに合わせてジャブ、カウンターのジャブ、そして打ち終わりにジャブ。

相手が踏み込んでくるタイミングでのボディフックと同じ軌道でのアッパー。

常にヌルヌルと動く頭に、前後左右に動き続ける脚。

上下の打ち分けもするし、相手の踏み込みに合わせてちょっと右にステップして、前手で相手を抑えつつ角度をつけた右ストレート。

ひたすらにパンチを避け、パンチを当て続け、ワンサイドにも関わらず一向に倒れるどころか効く素振りすら見せない非力っぷり。

たぶんスパーリングなら誰よりも強いと思う。

 

ハリソンはKOの匂いのない地味強ゆえに過小評価されがちだけど、負けたハード戦もチャーロ戦もKOされるまでは優位に試合を進めていた。

一発のある相手と戦うと、試合が終わるまでに一発貰うかどうかというのがハリソンの試合。

今回はトップクラスとは言えないガルシアをうまくスクールした。

 

ハリソンは小技の技術はあるけれど、それで勝ち続けられないというのは、ある種の技術に欠けている。

技術といえばディフェンス力や小技を技術だと思いがちだけど、効かせてKOするのも、強いパンチを打つのも技術なのだ。

そういう意味では、井上尚弥やベテルビエフやワイルダーというのは、技術の塊なのだと言える。

ハリソンには小技があるし、脚も頭も動く嫌らしいボクサーではあるが、効かせるための技術や、シャクールのようにフィジカルを活かして距離を支配する技術には欠けている。

クロフォードは小技を出しつつ、それでKOして見せる。

ハリソンがガルシアに何度も打っていたジャブカウンター、クロフォードはこれでブルックをKOした。

ここに似た技術でも決定的な技術差が存在する。

角度なのか、タイミングなのか、あるいはフィジカルなのかはわからないが、そこが勝ち続ける選手とトップに届かない選手を分ける。

 

と言いつつも、足りない上で技術と戦術を駆使して戦う嫌らしい地味強のハリソンは大好きだし、なんならクロフォードよりも好きだ。

バルテレミーのセンスを持て余した倦怠感を漂わせるボクシングも好き。

だけどバルテレミーさんは最早youtubeにも試合が上がらなくなった。

1敗しかしていない元王者にも関わらず不遇な扱いを受けている。

まあイースター戦を見れば不遇の理由も分かるのだが。

エキサイトマッチは余った予算でバルテレミーさんの試合も放送してください。

 

メインのフンドラvsルビンも哀愁の漂う試合というか、センスを見せつつもここ一番で勝負をかけて負けていくルビンになんとも言えない物悲しさを覚えてしまった。