ハンティング・ISISを見た
アメリカのドキュメンタリーで、シリアのクルド人部隊で志願兵をする西洋諸国の人々の話。
彼らはISISと戦う舞台なので、それが主題なのだけど、面倒なのが彼ら自体の所属するYPG自体も多くの国から非正規のテロ集団と見られているところ。
クルド人の民族自決を試みて、トルコでゲリラ戦をしていたが停戦して南下、シリア北部を実効支配していく中でISISの占領地を侵攻しているという流れらしい。
シリア政府とは争っていたり連携したりしているし、アメリカ軍が支援しているが、米国人の志願はやめろと言っている。
実際にアメリカ軍が撤退し見放されてシリア政府に泣きついたりした。(この辺はアメリカの中東身勝手しぐさともとらえられる。)
宙ぶらりんな軍隊なのだけど、敵の敵は味方理論でISISと敵対している組織と一時的に組んでいるということらしい。
この辺りのことはあまり語られておらず、単に世界の敵と戦うヒーローという視点で描かれている。
志願している西洋人も、戦闘を求める元軍人から、軍の採用を弾かれたワナビーみたいな人、軍と同行すれば戦場で写真が撮れると思った人など色々。
皮肉なのが、彼らの多くがISISと同じようにYPGをfacebookで知って志願したということらしい。
ドキュメンタリーというジャンルかは際どく、ドラマ風に作られている感じもするが、出来自体は非常に良い。
モースル戦やラッカ戦が舞台なので派手な戦地の映像も見られる。
ただ、YPGはイラク国軍との連合軍ということで最前線で重要な役割を担うことはあまりなかったようだ。
戦闘員の活躍よりも、衛生兵の活躍シーンが多い。
それは実際の活躍の場が多く与えられたということもあるし、衛生兵のピートが魅力的でドラマ向きな登場人物ということもある。
衛生兵は民間人の負傷者の救急治療を行っていて、後方支援ながら忙しい。
また、戦闘を求めて戦地に行った人よりも、衛生兵で苦しみながらも人命救助に勤しむ人に共感しやすい。
少なくとも、ぼくには衛生兵の彼らだけは英雄に見えた。
というわけで、画面の中の情報だけを鵜呑みにするのはどうかと思うものの、全体像が見えない中の一部の視点から見たYPGの志願兵という物語としては良くできていて面白い。
ちなみに、本作の主役、衛生兵ピートは6年間もシリアで医療活動をしたあとにNGOを発足して、中東やメキシコやイエメン等で活動しているらしい。