パッキャオvsウガス 感想

まず前座から。
ゲレロvsバルガスの哀愁がすごい。
ゲレロなんて、奥さんが白血病で治療費を稼ぐために適正階級から上げたのに、今度は自分が廃人になるようなキャリアを歩んでいて、対するバルガスも明らかに全盛期から程遠いパフォーマンスで、なんというか、本当に黄昏を眺めている感覚だった。

 

メインのパッキャオvsウガスに関しては、そんなにパッキャオの動きが悪かったようには思えなかった。
ただ、ウガスは直近のパッキャオの相手としては一つ格上で、ウェルターの一線級ファイターには及ばなかったというのが正直な立ち位置なのかなと。
単純にレコードだけ見ているとわかりにくいけど、パッキャオのここ数戦の対戦相手の質は正直良くはない。美味しい相手を選び続けていた。
そんな中でスペンスという超一流との試合だったので、何があったのかと驚いたのだが、選挙に関することらしい。

 

それで試合に関しては、鍵はウガスの右オーバーハンドだった。
パッキャオが過去にマルケスにKOされたのも右オーバーハンドで、あの手のパンチがあまり見えないんじゃないかと思う。
パッキャオは目を切って下を向いて打つ癖もあって、その辺りが原因なのかなとも思う。
ただ、タイミング的には致命的なもらい方をしていなかった。
ウガスがドンピシャのタイミングで右を打たなかったので、少しずれたタイミングで被弾していたのでダウンには至らなかった。
これがクロフォードならKOされてたんじゃないかなと。

 

パッキャオはやたらと頑張っていたように思う。
たぶん、ただの試合の勝敗を追っていたのではなく、その先の大統領を賭けて気合を入れていたんじゃなかな。
試合後の落胆ぶりからも、賭けていたものの大きさが見てとれる。

 

相性的にもウガスはパッキャオの得意なタイプで、ガードを固めて待つタイプはパッキャオが今まで得意にしてカモにしてきた。

クロッティ、コット、マルガリートなど。

パッキャオがひたすらガード越しに叩きまくって打ち終わりには相手の射程から逃げる。

ステップワークを駆使して翻弄してきたのだが、今回はステップアウトのタイミングが遅い分被弾が増えたように思う。

といってもこの辺が悪くなったのはもう何年も前で、ブラッドリーと試合をしていた頃にはずいぶんと足が重くなっていた。

やはり、パッキャオもロイジョーンズと似たような道を辿るのだなと。

 

後は細かい愚痴なのだけど、エキサイトマッチの採点はここ数年、現地採点と乖離しすぎてないか?
それぞれが判断軸を持って採点するのはいいのだけど、勝敗は現地の採点で決まるのだから、ある程度はメインストリームに合わせてくれないと、試合の趨勢が見えなくなる。
多くの日本人はエキサイトマッチを通して試合を見ているわけで、当然実況や解説の印象に引っ張られる。
こういうことが多いから、最近は音声を消して視聴することが増えている。現地音声を導入してくれないかなあ。

 

あとはレフェリー、明らかにベルトラインのボディにもかかわらず、パッキャオがアピールしたらすぐにローブローの注意をする。介護かよと。
パッキャオにせよロマチェンコにせよ、ボディを嫌がってやたらアピールするけど、レフェリーはあんまり付き合って過剰な介護するのはフェアじゃないと思う。

 

 

今日の興行のテーマは、哀愁と黄昏。
スペンスは美味しい試合を逃したし、パッキャオは選挙の価値が遠ざかり、前座のベテラン達は未来を削り合い、ウガスはキューバ亡命からの苦労が報われ棚ぼたの大金を手に入れた。

 

余談だけど、パッキャオが大統領になるってなかなかやばい。

アントニオ猪木とか、シュワルツネッガーが国家元首になるようなもんで、そりゃ無理でしょって思うのが普通だと思うんだけど。

ドゥテルテがバックについて、表にはパッキャオが出る形になるのかな。

まあ文字も読めない耄碌した爺さんが首相やってるどっかの国よりは、若いおっさんが大統領やるほうが幾分ましかもしれんね。