中谷正義はライト級戦線で勝ち抜けるか

中谷正義が復帰するらしい。

中谷といえばテオフィモ戦で圧倒的不利な下馬評を覆しての善戦をした。

戦前の予想では日本人ですらKOされて当たり前、後半まで持つかどうかみたいな扱いだったように思う。

そもそも王座戦ではなく、テオフィモもまだスターではなくプロスペクトだったため、ボクシングファン以外からはさほど注目されていなかったという事情はある。

低期待からの予期せぬ善戦で上がった中谷の評価は、テオフィモがロマチェンコに勝ったことで過剰なほどになっている。

たしかに中谷は善戦していたし、全勝でKO率の高いテオフィモが最も苦戦した相手と言える。

その苦戦っぷりはvsロマチェンコよりも追い込まれていた。

とはいえ、判定では明確に負けていたし、テオフィモは明らかに中谷を舐めて準備不足だった。

 

中谷のテクニックやフットワーク、距離感は見事で、長身で頭も足も動くし相手に飲まれない度胸も持ち合わせている。

その反面、パンチのパワーはテオフィモに明らかに劣っていて、ボクシングの質では上回っていたがテオフィモのフィジカルとパワーにゴリ押しで押し込まれる形になった。

中谷のメンタルや相手を食ったような態度、日本人らしからぬテクニックは井岡ジム出身の井岡一翔と被るし、ハードなマッチメイクも好みだ。

だが、これからの中谷のライト級戦線は過酷だ。

テオフィモと似たタイプのデービス、中谷と似たタイプでよりスピードのあるヘイニー、単純なテクニックでは未だにトップクラスのロマチェンコ。

候補では同じトップランクのロマチェンコ、そしてテオフィモ第2戦が有力だろうか。

いずれの相手でも、明確に優位があるとは言い難く、パワーで劣る中谷が彼らを相手に明確にポイントを取って多くのラウンドを支配し続けられるとは思えないし、イーブンくらいならファンベースで劣る中谷はまず勝てない。

その反面、中谷なら誰とやっても面白い、どちらかというと玄人好みのテクニカルな試合が見られるのではないかと思っている。

 

復帰戦の相手はベルデホで、いつの間にかプロスペクトから転がり落ちて1敗にも関わらずサバイバルマッチを続けている。

中谷戦もサバイバルマッチと言えそうだ。

ただ、人気でいえばプエルトリコ人のベルデホに大きく分があり、テオフィモがスターになり、そのスターを苦しめた中谷にベルデホを勝たせることでスター街道にもう一度復帰させるのが目的の試合と言えるだろう。

プエルトリコ人はコット人気を支えた大きなファンベースの反面、コット以来のスター需要を満たす選手が生まれなかった。

中谷は試合前から不利な試合で、KOしたいところだ。

まあ最近の、というより昔からベルデホにそこまで魅力を感じたことは無かったし、あっさり勝ってしまってもおかしくない。

個人的にも実力では中谷やや有利、アウェイでやや不利といったところだ。