中谷vsベルデホ 感想
いやーいい試合だった。
ダウンは喫したものの、KOしかない試合で見事KOで仕留めた中谷は見事。
ベルデホは中南米系エリートアマ上がりボクサーという感じで、ややパワーレスなものの脚を使って距離を取りつつ、きれいなボクシングをしていた。
フレームが小さく、最初に用意していた作戦はボディジャブだろう。それに加えてプルカウンターが効いていた。
中谷はソフトパワーの選手で、身体能力やパワーがずば抜けているわけではないが、食らっていいパンチと危ないパンチの取捨選択がうまく、得意のジャブが有効な距離を保つのが上手い。
この試合も中間距離で均衡しているときはほぼ互角の展開を見せていた。
ダウンした場面はどちらもカウンターで、見えているパンチへの対応は上手いが、見えないパンチだと長所が活かせない。
特に序盤はプルカウンターをよく食らっていた。
ただ、中谷の凄い点は、徐々にプルカウンターへの対応をして後半にはほぼ貰わないところまで持って行ったところだろう。
とても知的で曲者感あふれるボクシングは魅力的だし、それを支える図太いメンタルは素晴らしい。
ただ、得意のジャブも適中率が高いわけではなく、パワーがあるという感じでもないので、決め手にかける部分はある。
スリッピングアウェーも山中とか井上とか日本人は好きだけど、紙一重の技術でリスクはあるし、見栄えが悪いのでポイントを考えると不利だ。
ベルデホに関しては、中南米系エリートにありがちな、フレームは小さいがきれいなボクシングをして、3Rまでのクオリティはとても高い。
その半面、脚を使うスタイルはスタミナを使うし、適応よりも自分の型を繰り返し続けるというアマチュアにありがちな癖がある。
その結果、中盤から相手の慣れとスタミナの低下によってジリジリと追いつかれるという展開をよく見る。
サイズに劣るのでそれに耐えきるようなゴリ押しも効きにくい。
この試合も似た展開だった、小國vsグズマンやララvsハードなんかを思い出す。
それでも、中谷のKOへの嗅覚が良かった。相手が効いた素振りを見せれば一気に攻める。
中谷はライト級トップと比べると、誰が相手でも不利だとは思うが、誰とやっても勝てる可能性がある、苦戦させることができる、そういう期待が持てるし今後が楽しみだ。
中谷の重厚なキャリアはかつての石田と被る。
日本人中量級では石田がトップだと思うので、それを超えていってほしい。
村田に関してはマッチメイクがプロテクトされすぎていて、王者であっても評価は低い。
あと、メインのシャクールvsトカを見ていると、連打の時代は終わりつつあるのだなと改めて思った。
ボクサーのフィジカルが向上してパンチのスピードやパワーが向上した。
それによって、軽い連打に対して1発の強打の方が有効な時代になったように見える。
ここ10年くらいのトップを見ていても、大抵が2発くらいのコンビネーションに留めているように思う。
それ以上ならパンチよりもフェイントやボディーワーク、フットワークを入れる方を選択される。
軽打でも連打が成立するのはロマチェンコくらいのものだろう。
しかし、そのロマチェンコもテオフィモに連打を強打で寸断されて打つ手がなくなってしまった。
これも時代の移り変わりですなあ。
ところで、中谷の計量や入場時の☓はホプキンスリスペクトだろうか。
だとすると、キャラクターに合っているし、仮面をつける日を楽しみにしている。