ジョー・ジョイスvsダニエル・デュボア 感想
注目のヘヴィー級プロスペクト対決。
下馬評では優位とされていたデュボアをジョイスが破った。
この試合の感想としては、ヘヴィー級という階級の特異性が出た試合だった。
まず体格でいうと、一人ずつ見ると筋骨隆々で強そうなのはデュボアだったが、並ぶと0.5〜1周りくらいジョイスが大きかった。
そして、パワーパンチ以外の全てでジョイスが少しずつ上回っていた。
ジョイスはヘヴィー級において、そつのないボクサーに見えた。
パンチフォームには力感がないが、ソフトに見えるジャブはそれなりにきれいに、高確率でデュボアの顔面を捉えていた。
ヘヴィー級にも関わらず後半まで足を動かし続け、頭も振り、必要なところではガードを上げて被弾を減らし、フリッカーやボディジャブ等小技も持ち合わせている。そしてデュボアのパワーパンチを受けても平然としていられる打たれ強さ。
単体で見ると驚異的な武器ではないし、他の階級ではこの程度のボクサーではトップにはなれない。
しかし、ヘヴィー級においてこれだけ高いレベルで技術、体力、スタミナを兼ね揃えている選手は稀である。
そして、力感の無いパンチといえど、100kgを超える選手のジャブを貰い続けられるほど人体は強く出来ていない。
誰にもできるようで、誰にもできないボクシングを展開していた。
これがトップのフューリーやジョシュア、ワイルダーやオルティス辺りに通じるかは分からないが、それでもこのサイズとトータルバランスの高さは大きな可能性を感じさせる。
35歳という年齢とコロナで試合感覚が開いてしまわないかが懸念。
対するデュボアは、ヘヴィー級の倒し屋で通ってきたし、スペクタクルなKO劇を見せてきたが、大型化するヘヴィー級のトップどころと戦うには突出した武器が足りないことが顕になってしまった。
自分の間合いに入るまでに被弾をするし、ワイルダーのように一撃必殺と言えるほどパワーが突出していたわけでもなかった。
更に心が折れる形でのギブアップも合わせて、若いながらもその前途は多難であると言えそうだ。
上の世代が空くのをゆっくりと待つ、というのがもしかしたら現実的なのかもしれない。