2022-11-01 ボクシング観戦 吉野vs中谷 京口vs寺地

軽量級の試合にはそんなに興味はなかったものの、吉野vs中谷が見たかったのでアマプラ加入して見た。

 

 

吉野vs中谷

吉野が予想以上に凄かった。

中谷の世界戦線で明らかになった欠点に、接近戦の弱さ、一発で決めるパンチ力不足があった。

左の多様さはあるものの、それをかいくぐられたとき、相手の驚異になりうるパンチがほとんど無かった。

今回は対策にショートアッパーやボディフックに重点を置いていたように思う。

序盤ではそれなりに機能していて、ジャブをかいぐられた先のショートアッパーが有効だった。

 

ただ、吉野の出来がそれ以上に良かった。

吉野は今の日本中量級になかなかいないタイプで、一言で言えば質実剛健

常にガードを上げていて、パンチを打ってる最中でもガードを外さない。

顎を常に引いて上目遣い。

スピードこそないものの、確かな技術と強いフィジカルで徐々にペースをもぎ取っていく。

ここ数戦のマッチメイクの厳しさと、それを難なく乗り越える実力を考えると、早く世界に出してあげて欲しかった選手。

帝拳所属なら中谷と同様に世界に出られていたであろう。

この試合でも、パンチを貰いはするものの、決定打を許さない。

プレッシャーをかけて徐々にペースを握り、チャンスと見ればラッシュをかける勝負強さも見せた。

1発目の差し合いではスピードとリーチで劣るものの、クリンチ際や連打の最後の方のガチャガチャした局面では序盤から良いパンチを入れていた。

中盤からチャンスが広がって一気に決めきった。

ロマチェンコよりも早いラウンドで中谷を圧倒しKO。

この結果は今後のマッチメイクでも期待できるんじゃないだろうか。

 

とはいえ、中量級の鈍足豪腕ファイターはことごとく世界戦線で通用しなかったのもまた事実。

吉野は今までの中量級選手と格が違うと感じるが、スピードもパワーもテクニックも桁違いのライト級トップ戦線で吉野が勝てる姿は正直想像するのが難しい。

個人的には、ヘイニーに価値を落とされまくったスピードスターのカンボソスとOPBF最強決定戦をすればいいと思う。

カンボソスを圧倒すればライト級タイトル戦も見えてくるだろう。

 

 

Sフライ級の中谷vsメキシコ人

正直いうと退屈で見るのが苦痛だった。

中谷はフライ時代よりフレーム差がなくなって、懐に入られてはホールドの展開。

Sフライ級のクリチコである。

レフェリーもなかなか酷い。

ホールドしたのは中谷なのにメキシコ人をホールドで注意したり、メキシコ人がホールドされて上から頭を抑えられたことでのローブローでなぜかメキシコ人が注意されたり。

まあ日本で帝拳興行だしね。

懐に入られると何もできなくてホールド合戦やってる軽量級なんて、見るに耐えない。

Sウェルターで2m超えててもインファイトで相手を破壊しまくってるフンドラの方が100倍楽しい。

小さいロバートイースターJrを目指しているのかもしれない。

だけど、雑なクリンチワークで抑え込まれる方に凡戦の原因があるので、メキシコ人が悪い。

 

 

 

ゴンザレスvs岩田

ゴンザレスがミニマムやLフライ周辺でしか見られない古き良き中米バックギアランニングを見せてくれた。

流し見しかしていないけど、試合後に飲みかけの水を対戦相手に飲ませたり、日本で4団体統一するといった辺りは良かった。

あと私のボクシングを披露するという塩ボクサーあるあるインタビューを久々に聞けた。

一時期よりボクシング熱が冷めているのだけど、塩ボクシングが好きだというのは、中量級以上の洗練された嫌らしい塩ボクシングが好きなのであって、軽量級の元々塩っぱい食材を雑に調理して出来上がった雑塩料理が好きなのではなかったのだと思う。

 

 

京口vs寺地

軽量級つまんないなと散々言ってきたけど、これは流石に面白かった。

技術力が高い試合だった。

ガードを固める京口vsガードを下げてリードジャブで戦う寺地の構図は吉野vs中谷と似ているが結果は逆に出た。

昨今のボクシング界では、ガードが低い選手が負けるたびにガードを上げてないから負けるのだ、というアホみたいな批判が噴出するが、それが正しければボクシング界はアルツール・アブラハムスタイルで溢れかえっているはずである。

 

ガードを上げて距離を詰めて連打を打ちたい京口と、遠い距離からジャブとストレートで先手を取って、京口が打ち返したときにはフットワークで距離を取りたい寺地。

この場合は寺地の方が優勢だった。

京口はガード自体は固くて、1Rから手数では圧倒されていたものの、序盤はほとんど貰っていなかった。

とはいえ、ずっと鉄壁のガードでいられるわけではない。

寺地は京口の高いガードの隙間を通したり、フットワークの勢いを乗せたパンチで京口のガードの上から弾き飛ばしす場面が増えた。

 

ハイガードプレススタイルvsフットワークスピードスタイルだと、いつ勝負をかけるか、が一つのポイントになる。

プレススタイルが勝つパターンは徐々にプレッシャーを強めて追い上げる形が多く、フットワークスタイルは序盤のリードを守りきる形が多い。

だけど、今回は序盤でフットワークスタイルが相手のギアが上がり切る前にダメージを与えて一気に試合を決めた形になる。

京口としては、もっと後に山場が来ると想定していたと思う。

けれど気づいたときにはダメージが溜まって自分の持ち味を出せなかったのでは。

1度目のダウンを奪われた後の巻き返しは流石だったが。

 

なんとなくだけど、京口は序盤から硬かった、というより硬すぎた印象で、ひょっとするとかなり気負っていたのではないかと思う。

寺地のスピードとスケールに面食らっていたかもしれない。

 

寺地は連勝街道を突き進んでいたと思ったら、酔っ払って他人の車を大破させ、矢吹に負けたけど難癖つけてリマッチしたという、なんとなくスター街道を降りていった感じがあった。

アメリカの黒人ボクサーが駄目になるパターンみたいな。

対する京口はマッチルームと契約して海外でタフな防衛戦を乗り越えて、いつの間にか寺地との評価も逆転した印象。

私生活の乱れ具合も、ガードの高さも、凡人理論では寺地に勝つ理由はないのだが、蓋を開けると寺地の圧勝に終わった。

常人ではあり得ないほどの能天気さと狂人っぷりが、ビッグマッチの序盤からフルスロットルで飛ばせる異様なメンタルを支えているとも言える。

言おうと思えばどうとでも言えるので、やっぱり世間様や他人様の言うことなんて真に受けてはいけない。

 

そういうわけで、トリと大トリには満足。

長めのトイレ休憩もあったし、500円にしては楽しめた。

さいたまスーパーアリーナでやったみたいだけど、このカードで埋まるのか、軽量級が遠い席から見えるのか、というのは疑問。