カネロの最大の強みは自分が強く打てるシチュエーションの判断力

カネロの躍進が止まらない。

正直カネロのボクシングは退屈で好きじゃないのだが、数々のビッグネームが食われているわけで、その強さに疑いの余地はない。

コンビネーションが凄いとか、ディフェンスが凄いとか言われるけど、カネロが最近強いのは、パンチを出すシチュエーションの選択がうまくなったことだと思う。

 

以前はコンビネーションパンチャーという認識だったのだけど、最近のカネロのボクシングは以前とはかなり変わってきている。

ハイガードでプレッシャーをかけつつリングカットして、自分が素早く踏み込んで強く打てるタイミングがくるのをじっと待つ。

その瞬間になれば素早い踏み込みと、2発程度の強打を打つ。

基本的にジャブの差し合いはせず、相手が強打を打てる距離ではディフェンスに徹する。

ディフェンスが良いと言われているが、正直見切りがいいタイプではない。

クロスレンジで打ち合っているときは貰う。

カネロが捌いている場面はほぼ様子見のディフェンスモードのときである。

 

以前と比べると、打つべき時に打つべきパンチを打つ取捨選択がとてもうまくなった。

そして、一発一発にパワーを込めるようになっている。

それに加えて持ち前の耐久力がカネロのボクシングを構成している。

ボクシングで安定して勝つ最も簡単な方法は、相手より速く強いパンチを打ち込むことである。

井上もデービスも基本的には単純な理屈で強い。

それと同じものをカネロにも感じる。

コンビネーションの数は多くなくてもいい。

単発でもただ圧倒的に強く速いパンチが打てればいい。

 

かつてカネロが苦手としてきた、アウトボクサータイプに対する弱点は完全に克服してきているように思う。

階級をあげたことで、相対的にインファイター寄りの立ち位置になり、強化した対アウトボクサー戦術でほぼ全ての相手に対処できるようになったのも大きいだろう。

 

カネロに勝つには何をすればいいのか。

一つは無闇に手を出さないこと。

カネロがガードを上げて様子見モードに入っているところに無闇に手を出すと、カネロの距離を作られてしまう。

カネロの距離を徹底的に外し続けて、焦れたカネロに先に手を出させて、パンチの交錯際のカウンターを狙うのはアリだろう。

ジャブだけで言えばカネロはそこまで差し合いに優れた選手ではない。

初手で驚異になるのはロングフックとボディ、そしてストレートだろう。

これにカウンターを合わせる。

あのカネロを倒せるか、判定で勝てるかというと何とも言えないが、今のカネロ相手にアウトボクシングでポイントアウトするよりは勝算がありそうだ。

 

もう一つがステップインできる距離を潰して超接近戦に持ち込むこと。

カネロ、井上、デービス(、テオフィモ)などに共通しているのが、鋭いステップインを活かしたスピードのある強打である。

これを殺すには、体を寄せてステップインできるスペースを潰してやればいい。

体の押し合いに持ち込んで、上体をのけぞらせてやるとより良いだろう。

これができる選手がどれだけいるか?と言われると難しいのだが、wbssのsライト級決勝でジョッシュテイラーがプログレイス相手に見せたような超近距離の殴り合いができれば、カネロの現在のボクシングの根幹を揺るがすことも可能だろう。

 

繰り返し、カネロのボクシングは好きではないし、カネロの判定や契約で優位を取る場外戦術も好きではない。

それでも、いまのカネロが弱点を一つずつ潰して着実に成長していっていることは事実だろう。

このカネロのボクシングを攻略してくれるボクサーの登場を心待ちにしている。