良くも悪くも、お互いのキャラクターが出たいつも通りの試合展開だった。
井岡は序盤は様子見をして中盤以降から適応力で差をつけていくタイプ。
田中は序盤のスピードは素晴らしいものの徐々に疲れと相手の慣れで対応されて最後は力押しになるタイプ。
この通りの試合展開になっていたように思う。
井岡のKOは見事という他ないが。
お互いのスタイルの相性もあった。
井岡は対格が同じくらいか自分より小さい相手に強く、リーチや身長差のある相手には苦戦しがちだ。
Sフライに上がるまでは圧倒的な距離感を武器にジャブを主体としたボクシングをしていて、その射程の中であれば優位に戦えていた。
Sフライだと相手のリーチが自分より長く、相手の距離が自分より長くなるため以前のボクシングが成立しにくくなり、インファイトにスタイルを変更するも苦戦が増えていった。
下から上げてきて、中間距離から近距離で戦う田中は相性的は良い相手だった。
それに対して田中は序盤は圧倒するものの、一発のパワーがあるタイプではなく倒し切れるまではいかない。
またディフェンスが甘く被弾は多い。
その結果、終盤は泥仕合気味になり体力でゴリ押しする展開になってしまう。
歴戦のダメージもあるのか、1階級上の攻撃力の差か、ルーズなディフェンスを突かれて思いの外効いてしまった。
前半ではステップの出入りで半歩井岡の射程の外から打てていたが、1回目のダウン以降はいつものゴリ押しモードになり、あとはずっと井岡ペースだった。
ビッグマッチ志向の井岡はアメリカでエストラーダやロマゴン、シーサケット辺りを狙うだろう。
この辺りの選手も下の階級から上げてきた選手で、井岡が苦手とするタイプではない。
個人的にはエストラーダとの技工的な試合が見たい。
反対に田中の今後はちょっと厳しい感じがする。
ゴリ押しが効かなくなり、相手の攻撃力が耐久性に勝ってきて階級の壁を感じつつある。
ディフェンスに磨きをかけないことには、何かの拍子に貰った攻撃が命取りになりかねない。
まだ若いと言われつつも、厳しいマッチメイクを積んできてダメージで言うと井岡より多い田中の選手寿命はそう長くないのかもしれない。
年末に中谷井岡と見てきて、やはり旧井岡ジムの選手の技術やメンタリティはちょっと他とは違うなと思った。
マネジメントに失敗しているのでジムとしては駄目だったのかもしれないが、井岡父はトレーナーとしてはとても優れた人だったのかもしれない。