ボクシングヘヴィー級黄金期
タイソンは過去の遺物。
ボクシングはヘヴィー級からスーパーヘヴィー級になった。
レノックス・ルイス後にクリチコブラザーズによるツインタワー時代が訪れ、同時期には213cmに150km近いニコライ・ワルーエフがいた(なぜか体格差を活かすことなく普通に綺麗なボクシングをしていた)
ちょくちょくジョン・ルイス関やデビッドヘイが絡むものの、ヘヴィー級のトップは2m超え選手のものだった。
10年以上に渡るクリチコ政権冬の時代(KOしまくるのに塩っぱい試合ばっかりだった)に引導を渡したのは、更にデカいタイソン・フューリーだった。
その後にフューリーがメンタルを病んで引退し、ジョシュア・ワイルダーの華のあるKOキング達の時代が訪れ、遂に世紀の統一戦か!というところでジョシュアがアンディー・ルイスにギブアップして負けた。
更にワイルダーも復帰したフューリーに吹っ飛ばされ、時代はフューリーのものになった。
ジョシュアはルイスとの再戦に勝って3団体王者に返り咲いたものの、Quitter(試合を諦めてぶん投げたやつ)との汚名を着せられ、再戦もひたすら足を使ってコツコツジャブを打って12R逃げ回って勝ったとなると、最早かつての威光はない。
そういうわけで、フューリー様がクリチコから世界最強の座を現在まで引き継ぎ続けているわけである。
しかし、フューリーもジョシュアもワイルダーも、もう若くなくそろそろ下のプロスペクト世代が台頭してきても良いのだが、実のところあまりパッとしない。
ひと世代下くらいまでは3トップが食い荒らしており、おおよその順位付けは済んでしまっている。
更に下のランカー未満でレコードを作っている層も、2m超えがスタートラインの現在のヘヴィー級にしては小粒だ。
これはもうアレなんじゃないかと。
競技レベルの進歩が今のヘヴィー級を生んだと勘違いしがちだが、単に今までの選手のレベルが高すぎた。
クリチコさんからスムーズに世代交代が進んでしまったせいで見落としていただけで、ずっと黄金世代が続いていたに過ぎないと。
男子テニスで10年以上フェデラーやナダルやジョコビッチが蓋になっているようなものなのかもしれない。
もう我々はしばらくフューリー様のような選手を目にすることはない、ひょっとすると死ぬまで出こないかもしれない。彼はそういう不世出の選手だという有り難みを胸に抱いておくべきかもしれない。
タイソンのような古き良き、競技レベルの低かった時代の派手なKOを懐古するのも悪くないが、我々はいまヘヴィー級の黄金期を目の当たりにしているのだという自覚を持っている方が幸せではないだろうか。
と言いつつもフューリーさんは格下相手に取りこぼすほど調子の波があるのでいつ誰に負けてもおかしくない。
ちなみに、クリチコブラザーズ兄のビタリ・クリチコはウクライナのキエフ市長で第三党UDAR(一撃という意味らしい)党首であり、国政進出(大統領)も狙っている。
反ロシア派。世界最強の市長。
対するワルーエフはロシアの下院議員でロシアの保守政党(第一党)に属している。世界最大の議員か?
彼らはリング上で拳を交えることこそ無かったものの、リングを降りて更に大きな野望や大義を背負って対立する立場を取っている。
いずれリング外での最強対決が見られるかもしれない。
色んな意味での黄金期が訪れているのだ!
その2
ちなみに、試合はKOに次ぐKOにも関わらず、塩っぱいとか朝っぱらから(ドイツで活動していたため試合はリアルタイムだと日本の早朝)睡眠導入剤だと言われ続けてきたクリチコ兄弟だが、入場だけは超クールでド派手だ。
しかも筋骨隆々の大男が入ってくる入場は様になる。ハメドなんて子供に見える。
入場がピークとまで言われた芸術を是非見てほしい。