OBSOLETEはミリタリーロボアニメ。
概要は公式サイトでも見てもらえるといいのだけど、格安で2足歩行ロボットが世界中で手に入るとしたら、世界はどうなるのかという話。
このアニメ、SFとしてとても良く設定が練られていて、考証がされている。
SF好きとしても、ミリタリー好きとしても、ロボット好きとしても楽しめる。
物語のはじまりは、突如あらわれた宇宙人が石灰岩1000kgと2足歩行ロボットを交換してくれることからはじまる。
燃料も操縦のための訓練もなし、買うのに必要なコストは1000円くらいということで、世界中の誰でも買えて誰でも乗れるロボット。
現代において2足歩行ロボットなんて、効率が悪いしわざわざ操縦者を載せる必要性もなく、バンバン量産する金はどこから出てくるのかという現実的な壁が存在する。
そういう都合の悪い部分を宇宙人が解決してくれる。
そして、この嘘以外は骨太なリアリティが支えている。
宇宙人についてはこの部分以外は物語に関わらない。
単に、以上の前提を成立させるだけの舞台装置だから。
地球にとってはありふれたものが他の惑星では希少品、という話はSFではよくある設定で、キン・ザ・ザを思い出した。
ロボット(エグゾフレーム、以下エグゾ)もただの素体だけ宇宙人がくれるため、戦闘用の外装なんかはついてこない。
初期は運用ノウハウもないため、各勢力がそれぞれ独自の外装や武装を整えている。
メカ的な魅力はこの辺りにある。
2014年から2035年までの時代を描いていて、初期は手探りで装備を整えている。
テープで留めただけのタブレットを外部モニターにしていたり、AKをただ備え付けただけのような装備で戦う民生品の流用で武装していたりする。
初期はエグゾ専用の武器が整っておらず、既存の人間用の武器を流用した戦いが多く見られる。
また、金のある勢力は専用設計の装備を持っていたり、潤沢な装備を持っているのに対して、貧乏な勢力は数に任せて自爆がメインのカミカゼ戦略をとる。
以下エピソード毎のネタバレを含む考察とか。
まず陣営が主に2つに分かれている。
先進国vs後進国という構図になっていて、先進国は格安で燃料も不要のロボットの使用が広まれば、自分たちの産業が持つ優位性が失われる。
そこでサンクトガレン条約でエグゾの使用を禁止する国際条約を締結した。
その戦闘にいるのがアメリカ。
しかし、貧困国からすると先進国から高い金で買うよりも、遥かに安く手に入り、操作も簡単なエグゾの使用は当然となる。
エグゾ推進の戦闘にいるのが、アザニア共和国(架空の国)となる。
アザニアはエグゾの使用を推進することで、先進国と発展途上国の技術格差を無くすことを掲げている。
そのために、エグゾの軍事利用を秘密裏に推し進め、各国の紛争でエグゾを使用する特殊部隊(アウトキャストブリゲード)を投入して戦況を変えている。
アザニア、アザニア擁するアウトキャストブリゲード、アザニア側に付く後進国vsアメリカ、アメリカ海軍のエグゾ部隊、アメリカ側に付く先進国というのが主な構図。
アメリカ側の特殊部隊が主役ではあるが、サンクトガレン条約の手前、海軍がおおっぴらにエグゾを投入するわけにはいかないし、上層部の危機意識も低いため、エリートながら少人数の極秘部隊という扱いになっている。
以下各エピソードの感想
EP1
これは時系列でいうと2022年の物語のため後で書く。
EP2
2015年のアフリカが舞台。
エグゾが武器としてはじめて投入された。
この頃はアフリカのゲリラ舞台が、ほとんど素体のまま扱っている。
何の装甲もなく、素体に乗ってAKを売ったり、自爆が主な作戦。
アウトキャストブリゲードのエンブレムである左頬に二本の傷があるドクロが描かれている機体が現れる。
しかし、この頃にはまだアウトキャストブリゲードが組織される前であるため、ドクロ傷のエンブレムを使っているのはザヒールのみと推測される。
つまり、ザヒールが現地のゲリラを組織して、米軍を打ち破った戦いだと推察できる。
EP3 2016年 カシミール地方
印パ紛争に軍隊としてはじめてエグゾが投入された。
その現場のインド側にアメリカ海軍の三谷島が視察に訪れた戦い。
ちょうどハマったのはこの辺りから。
三谷島はアメリカ海軍ではなく、日本の陸上自衛隊員に偽装してインド軍に視察に行った。
この事から、インドはサンクトガレン条約を守っていないながら、日本を含めた先進国陣営であることが伺える。
この回は本当に拘りが感じられて、まず舞台となってるいるのが印パ紛争最前線のカシミールのカラコルム山脈が舞台。
エグゾの装備はまだ手探りという段階で、武器はエグゾ専用設計ではなく、既存の兵器の組み合わせを使っているし、外部モニターに至っては配線をテープで留めただけのタブレットを使っている。
ありあわせを取ってつけたような無骨な仕上がり。
ミサイルは優先誘導。
更に、スキーをつけているのだが、これはテレマークスキーと言って雪の上を歩きやすい仕様。
テレマークターンという独特のターンも見られる。
確かにこの場面ではアルペンスキーよりテレマークスキーが最善なのだが、それを見せるクリエイターの拘りが凄い。
インド側もパキスタン側もエグゾを移動手段としての用途として扱っている。
三谷島が自衛隊装備のSIGではなくグレッグを持っているのもこだわりを感じる。
偽装していると言えども使い慣れた拳銃を使いたいというところか。
頭を下げて敵機に接近する姿勢や、トリガー周りの取り扱いなど本当に細かい。
ここでも傷マークのエンブレムが現れるが、ここでもまだアウトキャストブリゲードは組織されていなさそうなので、あれはザヒールが搭乗していると思われる。
先進国側と争っているパキスタン側にザヒールがエグゾの操縦・戦闘法や運用法を指南しているのだろう。
初搭乗のエグゾで華麗にスキーを乗りこなし、敵機を撃墜し、ザヒールと引き分けた三谷島はとんでもない能力が恐ろしい。
ザヒールを取り逃がしたものの、敵機を2機撃墜してザヒールと引き分けた三谷島の勝利といえる。
あとインド舞台のワンチャックが優秀なのと、ラダックスカウトというのは実在の舞台でエンブレムも作中と同じくアイベックス。
EP4 2017年 中東
最先端のエグゾ装備は民間警備会社にある。
資金力豊富な先進国はエグゾの投入ができないため、民間警備会社がエグゾを用いた対エグゾ戦最先端にいる。
資金豊富な先進国側につきながら、後進国のゲリラ等を主に相手にしている模様。
ホバリング装置や海の中、
石油プラントを襲っているのは、石油を必要とするのは主に先進国側であって、燃料の要らないエグゾを活用している後進国側による妨害工作がメイン。
コマツやキャタピラーやリープヘルといった建機産業の株価が低迷していること、エグゾがペドラ(宇宙人)の中古品であることなどが語られる。
EP5 2016年 サブサハラ・アフリカ
戦車は先進国側の支援を受けていると思われる
ドローンでエグゾの位置を特定し、遠距離砲撃で倒すという、対エグゾ戦術が発達している模様
訓練なし、武器なしのエグゾでは先進国の軍隊には勝ち目がなさそう
ボトムズ的な世界感で、壊れたら別のエグゾに乗り換えてガンガン乗り捨てていくスタイル。
ザヒールがかっこいい。
ザヒール実はこれまで苦労していて、初めての対エグゾ戦に駆り出されて機体を破壊されたり、カシミール戦線に投入されて機体を破壊されたりしている。
今回は紛争地帯で先進国が支援する既存秩序の勢力と単騎でやり合う羽目に。
EP6 年は明らかにされていないが、EP5から少し時間が経過したくらい。2016-2017年 サブサハラ・アフリカ
アウトキャストブリゲードの結成と活躍
アウトキャスト・ブリゲード(見捨てられた旅団)の由来も明らかになる。
貧困国で使い捨てにされていた子ども達を中心に組織されたという意味。
アウトキャストブリゲードと相対するのはヘリや戦車で、先進国側の支援を受けている。
十分な武器がない中でエグゾを投げ捨ててヘリにぶつける戦法はオブソリートならでは。
ザーヒルの勢力はエグゾを駆使してアフリカの紛争を解決し、彼らなりの秩序を目指していることが描かれる。
EP7 2021年 アフリカ・アザニア
ザーヒルの所属する国が明かされる。
アフリカ連合のアザニア共和国。
レシャップ大統領直属の特殊な役職であることが分かる。
ザーヒルがアウトキャスト・ブリゲードのジャマル達に伝えたように、ザーヒル自体もレシャップ大統領に鍛えられたであろうことが分かる。
レシャップの経歴がなかなか骨太。
レシャップの意図として、エグゾフレームで南北の技術格差を解消し、それに伴う経済格差を解消することを目的としている。
アメリカ海軍のボウマン達がレシャップの狙いを理解する。
現在でも紛争が起こっているコンゴ。
サンクトガレン条約の締結国ではないアフリカでエグゾ同士の戦闘に介入しても利益が少ないと、アメリカは消極姿勢。
そこにアザニアが武力介入をしているということが語られる。
EP8 2022年 アメリカ・エリア51
アメリカ軍によって様々な実験が行われている。
エリア51は空軍の研究所で、ボウマン達は海軍。
軍の垣根を超えた交流が行われる。
エグゾの耐久性、機構など
5年前から研究所を設立してアメリカがエグゾ研究していた。
エグゾの基礎研究をしていた研究者達は更迭され、応用研究に興味を持ったはみだしもののギーク達が現在のエグゾ研究をしている。
エグゾの素体に、アメリカの現代科学の粋を詰め込んだ外装とエグゾに最適化した武器を搭載する。
アメリカ政府は軍産複合体の維持のために、エグゾの兵器運用には興味がなく、ボウマン達が2016年から行ってきたエグゾの調査と報告は上層部に握りつぶされたことが明かされる。
既存産業のためにエグゾの受け入れを拒むアメリカ政府という、イノベーションのジレンマに陥っている。
EP1 2023年 南アメリカのどこか
時系列的にここでEP1に戻る。
EP8まで見たらEP1に戻って見て欲しい。
初見とは全く違って見えるはずだ。
エクアドル・ペルー間の紛争が長期化。
アメリカはコロンビアの駐留米軍を増強を表明。
キューバ・ボリビア・ニカラグア・ベネズエラが抗議。
アルゼンチンもアメリカを批判。
ここでアメリカ海軍のボウマン達は秘密裏にペルーに軍事介入しエクアドル軍と戦う。
しかし、エクアドル軍だと思っていたのが実際には高度に組織化されたアウトキャスト・ブリゲードだった。
EP8に登場した米カスタムエグゾの初実戦投入。
米エグゾは熱戦で敵機のコックピットを直接焼き切るナイフ的な武器やアサルトライフル、暗視装置、ホバリングでの水上移動など豊富な装備を揃えている。
持ち運び式のレーザー兵器はエグゾと高性能兵器という米エグゾの真骨頂というところ。
戦局に合わせて武器を上空から投下し、使い分けるという運用をしている。
EP9 2023年 南米 おそらくマチュピチュの遺跡が舞台
ここからはボウマン率いる米海軍vsザーヒル率いるアウトキャスト・ブリゲートの戦いではない。
オムニバス形式でエグゾの浸透した世界を描く。
今回はプレデター回。
ベネズエラvsペルーの紛争地が舞台。
ペルー軍vsベネズエラ軍の紛争。
エクアドルとペルー間の紛争だったはずが、ベネズエラもエクアドル側として参戦している。
ここでもベネズエラ軍だと思われた舞台はアウトキャスト・ブリゲート。
ローレンス・フィッシュバーン似の隊長率いるペルー軍が姿の見えない敵に次々と撃破されていく。
着弾と銃声から距離を推測するなど、ミリタリー的な視点もリアル。
ペルー軍のエグゾは背面に防御が施されている。
これはコックピットへの直接攻撃を防ぐ狙いがあると思われる。
EP1で米軍がアウトキャスト・ブリゲート機を背後からビームサーベル的な武器で破壊した攻撃への対策が施されている。
これは米軍による情報伝達だろうか。
ジャングルの中の古代遺跡・見えない敵による軍人の狩り・青く光る液体・戦士たちの幻覚
エグゾを用いたプレデターとしてとても良くできている。
EP10 2025年 ソノラ・アリゾナ
メキシコから国境を超えてアメリカに違法入国する人たちの話。
移民を狙う盗賊がいる。
盗賊は2グループ。
一つが密入国屋とはメキシコ側のカルテル。
彼らはドローンから爆弾を投下したり、エグゾを武器にしている。
もう一つがアメリカ側の盗賊
盗賊の武器はエグゾはもちろん、武器を積んだピックアップトラック。
エグゾを使っていないことから、アメリカでは未だにエグゾを受け入れていない。
つまり、EP8で2022年にボウマン達が言っていたように、軍産複合体による既存産業を捨てられず衰退していったことが予想される。
アメリカとメキシコ国境の壁(トランプが作ると言っていたやつ?)は作りかけのまま。
アメリカはアザニアなどのエグゾの積極利用をする勢力との戦いに劣勢、あるいは負けていることが描かれる。
青く光る液体(ゲルシステム)を流しながら、マチューテを持つエグゾがかっこいい。
この話もオムニバス的な話ではあるものの、非常に良い。
前半が軍事・世界情勢・SF的な作りだったが、後半はエモーショナルな話が続く。
このエピソードのテーマは荒廃する世界でチャンスを繋いでいく人たちだろうか。
EP11 2030年 北欧・バレンツ海
海底回。
海中作業用のエグゾまで登場している。
もはや世界の趨勢は決したか。
ロシアの工作員が海底ケーブルを破壊している。
ロシアと敵対するのはノルウェーだろうか。
この回の戦闘もすごく良い。
静かで暗い海底。
暗闇の中で一瞬光る敵機のアイサイト。
魚雷による煙幕、プロペラを使わずフィンで静かに敵の背後を取ってありあわせの武器で戦う。
エグゾが二人乗りになったのかと思えば、エグゾの中でだけ出会える男女という物語。
ロボットものとその組み合わせはゼーガペインを思い出す。
EP12
エグゾブラスター!
おそらく時期はEP8の辺り。
この後の顛末を知ってからボウマン達を見ると、ぐっとくるものがある。