ミッドサマー、ぼくは楽しめなかった。
というのも、創作としてのリアリティを感じさせるラインが崩壊していた。
リアリティというのは、創作においても何が可能で何が不可能なことなのかは明確に分けておくべきで、名探偵が神の啓示で物語を完結してはいけないのである。
ジョバンニが一晩でやってくれました的な。
そういう意味で、あの作品には神の啓示のような謎アイテムが便利に配置されていて、興ざめしてしまう、というのが正直なところ。
ざっくり目についた部分だけでも羅列しておく。
以下ネタバレ
麻薬万能すぎ
村の秘薬を使えば気絶も麻痺も勃起もハイになるのも痛みを消すのも何でもごされというのは、流石に酷すぎる。
クライマックスにつながる流れを全部こいつでやってしまうのは、最早ドラッグムービーなんじゃないのかと。
ホラーとは。
麻薬とかもそうだけど、この夏至祭は90年に一度行われるらしい。
でも女王の写真はたくさんあって、90年に一度なら西暦何年なのか。
90年に一度なら、閉ざされたコミューンの癖に文化が継承されすぎてやばい。
何時間練習して実行したのか。実行委員会の苦労が忍ばれる。
もっと頻度が多いなら、明らかに少ない人口が回ごとに4-5人減っていくわけで、村の人口分布や赤子の数を考えても人口維持無理じゃないかと。
そのうえ、年配から口減らしするわけでもなく、労働世代真っ只中の男を3人も生贄にして村の労働力は大丈夫なのかと。
ラストは村の行く末が不安になって仕方なかった。
そして、1回で妊娠する村の女に、1人しかいない障害者に近親交配させて次世代も障害者を生産するシステム。
障害者の寿命は一般的に短いし、不妊のリスクもある。
継続的にシステムを回すなら、もっと多くの障害者を産んで冗長性を構築する必要がある。
やはり村の行く末が心配である。
そもそも、村に人を呼び込む若者はどうやってアメリカに入国して留学できるほどのルートと経済的な余裕があるのか。
フィンランドの公的インフラにフリーライドしているとすると、それはそれでヤバい。
色んなことを考えると、あの村をあの形で維持するには、謎の超テクノロジーが発展して日頃は鬼のような生産性や交配をしているか、もしくは本当に神の恵みがあるのかもしれない。
いずれにしても、冒頭からは想像できないのでやはり心配が尽きることはない。
こういうことが頭の中をグルグルしていて、なんというか、フィクションってムズいなと思ってしまった。
そしてコミューンの維持はさらに難しい。
まともに見られたのは口減らしシーンくらいで、それ以降はちょっと製作者の意図に乗れなかったです。