ONEでDJが負けた。
DJの全盛期を見たときには、こんなにMMAが進歩しているのかと思った記憶がある。
左右のスイッチがスムーズで、どちらの構えでも強い打撃が打てる。
そのうえ打撃の攻防からタックルへの入りも非常にスムーズ。
GSPが打倒極の最先端だった時代から、スイッチまでもをスムーズにこなす新時代のPFPを感じた。
それから数年経ち、MMAでは多くの選手がスイッチを使うようになった。
これは驚くべきことで、ボクシング長年の歴史でスイッチをうまく使いこなせる選手は数えるほどしかいない。
現役王者だとテレンスクロフォードくらいだろうか。
MMAとボクシングにおいては、タックルや組み際の攻防などがあることで、単純なボクシング技術がボクサーほどに必要ではない。
これは例えばマニアックな柔術がMMAではあまり重視されないのに似ている。
要するにボクシングではスタンスを決めて組み上げていく細かい技術が、MMAでは不要になり、左右を切り替えたポジショニングの方が有効であったりする、ということだろう。
これはメイウェザーvsマクレガー戦にも感じたことで、マクレガーのスイッチや組み際の強さに感銘を受けた反面、ボクシングでは常に異端だったりメイウェザーの技術体系がどれほど緻密に構築されているのかを再確認させられた。
あとは、ボクシングではMMAよりも距離が近いことやダウンで2点減点ということもあり、倒れやすい両足が揃うタイミングが存在することを嫌うということもありそうだ。
しかし、クロフォードがスイッチを使いこなして勝ち続けているようにスイッチに技術的な発展の余地があることは間違いないだろう。
サウスポーが苦手な選手は多いし、12R制という長い時間の中で相手を慣れさせないスタイルの変更は大きな武器だ。
近年はロマチェンコの台頭がボクシング界に技術革新をもたらした。
サウスポーならではのポジショニングや前手の攻防でガードを引き剥がすことなど、サウスポーvsオーソドックスで有効な武器がいくつも見いだされた。
これはオーソドックスの選手にとっても取り入れられるなら取り入れたい武器だろう。
クロフォードはサウスポーとオーソドックスで使うスタイルや技術体系が異なる。
サウスポーならではの戦い方を取り入れている。
MMAは技術の開発と吸収のサイクルが早く、ボクシングはそれほど早くはない。
しかし、ボクシングでもMMAやクロフォードの営業からスイッチを巧みに使いこなす選手が増えてくるはずだ。
ちなみに、MMAは2周目に入っているように思う。
一芸に秀でた選手の黎明期から、トータルファイターとしての完成度が求められるようになった。
DJもこの時代の象徴だろう。
ここまでが1周目だった。
それが、あまりに早い技術革新の結果、トータルファイターとしての完成度+確固とした武器を持つ選手の時代になった。
トレンドや技術革新の中で他の選手に真似されにくい、圧倒的な長所がなければ勝ち続けられない時代になっている。