ジャレット・ハードvsジュリアン・ウィリアムズ

これは2019年の個人的ベストファイト。

当時無敗で、Sウェルター級で圧倒的な体格と肩幅を活かし、L字ガードを使いこなすハードをウィリアムズが真正面から攻略した試合。

ハードは長期政権を誇ったエリスランディ・ララとの接戦を制したり、後に王者となる技工派のトニーハリソンに苦戦を強いられるも逆転勝ちをしている。

ハードのL字ガードはメイウェザーというよりも、ジェームズトニータイプ。

相手と体がぶつかるほどの近距離でL字ガードとショルダーブロックを使い、そのまま体格差を活かしてプレスとショートパンチですり潰す独特のスタイル。

スピードはそれほどでもないが、圧倒的な物量差を武器にしている。かつてのアントニオ・マルガリートに近いか。

 

当時のSウェルター級はチャーロ弟かハードのどちらが強いか、統一戦もあるのかという話題で持ちきりだった(ハードはこの試合で破れ、チャーロも前述のハリソンに苦戦を強いられ曰く付きの判定で破れた)

反対にウィリアムズはかつてチャーロと戦っており、スキルとスピードで互角以上に渡り合う場面を見せたが、チャーロの破壊力の前に沈んだ過去がある。

当然ハードの圧倒的優位というのが下馬評だった。

 

ハードが負けるとしたら、ララ戦の前半のようにスピード負けするのではないかと思っていたが、ウィリアムズは真正面からぶち抜いた。

頭も体もつけるハードの距離で、ウィリアムズはうまくスペースを作り、アングルをつくり、ハードのL字ガードを攻略した。

特に前手の左手の使い方が抜群で、左手で相手と自分体にスペースを作り、右を打ち込む。

かと思うとそのまま左フック左ボディのコンビネーションを打ち込む。

これらを機能させるために、接近した状態でもハードの左肩の側に頭のポジションを置き続けることで、L字ガードの下がった腕の上からオーバーハンドを打ち込み続けた。

ロマゴンを彷彿とさせるインサイドのテクニックを感じた。

 

これだけのスキルと戦略の実行力、分析力があればそうそう負けはしないと思っていたのだが、次の試合でロサリオにコロッと負けてしまった。

 

ウェルター級以上のPBC黒人ボクサーは妙にスキルがあり、スピードがあり、ズルさも含めたテクニックに秀でたボクサーが多いように思う。

このウィリアムズもそうだし、上述のハリソンもそう。

ハリソンvsチャーロ1は同じく年間最高試合トップ5に入るし、チャーロの爆発力の前にハリソンのテクニックが破られた2戦目もとても良い試合だった。

この手の黒人はライト級以上から目にする機会があるので、北米基準のライト級からがボクシングというのもうなずける。

Sウェルター級は何故か不人気階級扱いされがちであるが、ウィリアムズ・ハリソン・ララという技工派からチャーロ・ハードのような攻撃力のある本格派、はたまた身長203cmというヘヴィー級よりも長身のセバスチャン・フンドラなどタレント豊富な階級なのだ。

しかもウェルター級やライト級と違い、下の階級から上げてきたボクサーでは越えられない圧倒的なフレーム差が存在する(不人気階級に人気階級から転級する人がいないだけかも)とんでもない階級なのだ。

さあ、youtubePBC on Foxで地味強黒人ボクサー達を観よう。